京都写真学校カリキュラム
執筆:中川繁夫
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(005)写真のネットワーク

いま、ここで考えようとしている「写真のネットワーク」とは、
新しい時代の人間の生き方を探っていくための、
開かれたネットワークのことです。

現在、地球上のあらゆる場所で、学問上のあらゆる分野で、
生産と消費生活のあらゆる領域で、
これまであった社会システムや考え方では解決できないことが
あらわになってきているように思います。

このことは、世界の構造(国家と国家の関係のありよう)や
世界経済システムの変化により、
個々の人間のあり方も
急激に変化していかなければならないように思えています。

この変化はグローバル化する世界構造において、
いろいろと問題点がクローズアップされています。

ぼくたちの周辺を見てみても、
精神世界や宗教関連の出版物があふれ出していることや、
自然と親しむ方向(ルーラル化)への情報が
テレビ番組や雑誌などの特集が多くみられるようになったことがあります。

これは近代以前に人間社会が培ってきた
文化環境を取り戻す試みとして、
その現在的な問題を解決していくことを
暗示しているように見受けられます。
ぼくたちはこの情勢の変化を的確にとらえて、
新たな人間関係のネットワークをつくっていく必要が
あるのではないかと思っています。

各生産分野(特にここでは写真生産分野を中心として)
の専門領域においても、
このままでは人間不在ともいえる新しい商品開発の研究のみが
先行していくようにも感じています。

写真の分野では、モノクロ写真からカラー写真へ、
そして現在はデジタル写真へと移行しています。
そして、いつもその周りには消費者としてのぼくたちが存在しています。

あるシステムが商品化されることで完成したものとみなすとすれば、
フイルムをベースにしたカメラと写真処理はすでに完成品であって、
ぼくたちは消費者の域をでることができなくなってしまったのです。

デジタルカメラはすでに商品化されて機材としては完成しました。
今後は部分的改良が加えられてそのつど需要を喚起してきます。
でもそのソフトウエアである写真表現の形はまだ始まったばかりです。
現在はフイルム写真からの置き換え過程です。
20年ほど前にレコード板からCDへ移行したようにです。

ぼくたちはいま、
世界が統一(グローバル化)されていく力の構図に対して
どのようにして一人ひとりの人間としての
希望の実現を試みていくのかということが求められているのです。
こうした視点から見てみると、
いろいろと現れてくる新しい仕組みに対して
それぞれが意識的に対処していくことが求められていると思います。

これらのことを具体的に実現していくためには、
いまある商品としての価値観から意味を組み替えるべく
新しい考え方の体系を模索しながら、
新しい世界観をつくっていける個人と個人のネットワークが
必要だと思っています。

これから先、ぼくたちが具体的にやらなければならないことは、
写真を撮り、写真を創るということを中心としながらも、
現代のいろいろな問題を考えながら、
写真表現の形にしていくことだと思います。

自由に発想し新しい時代を創っていくためには、
具体的な方法を取得する場を創り出すことが必要で、
写真ワークショップのネットワークは
そのような場になればいいなと考えるところです。

価値や意味をとらえる思想の領域から、
生産と流通と消費の領域までを含む、
ぼくたち自身の一体化した新しいシステムを創り出していくことが
必要になっていると思います。

この写真ワークショップも、
すでにある価値観や意味するもののなかにありますが、
また、デジタルネットワークという商業システムを
使っていくことになるのですが、
紙一重のところでそこからの脱却を図って
それぞれが独自のメディア展開を
していけるようにしていきたいと思っています。

写真のネットワークとは、
ぼくたちが新しいメディアに使われるのではなくて、
これをぼくたちのために使いこなしていくことに尽きると思います。
具体的なネットワークの創り方は別項にて提案していきます。
大きくいえば、デジタル環境を使っての
ネットワークシステム作りということです。